馬券の払戻金全てに課税!?馬券裁判から見る無申告の怖さ!!

column

コラム

馬券の払戻金全てに課税!?馬券裁判から見る無申告の怖さ!!

馬券の払戻金全てに課税!?馬券裁判から見る無申告の怖さ!!

 

趣味で競馬をされる方はご存じかも知れませんが、競馬の馬券の払戻金に対する課税処分について、最高裁まで争われた有名な裁判があります。

 

その裁判の当事者が、競馬や行政裁判について書籍を出版されています。

 

著者 卍(まんじ)

馬券裁判-競馬で1億5000万円も儲けた予想法の真実

メタンモル出版

 

著書の冒頭部分で述べられているのですが、本件の課税処分によって、本来納付しなければいけない所得税は納付が完了しているが、無申告加算税と延滞税という罰則金が発生しており、その部分の納付が完了していない中、少しでもその滞納分に充てることができればと思い、本著書を執筆されたそうです。

 

この著者が納税に苦慮している罰則金というのが、確定申告を決められた期限までに行っていない場合に発生する無申告加算税と延滞税です。

 

無申告加算税と延滞税とは??

 

個人が1年間で儲けた所得というのは、翌年の3月15日までに確定申告を行って納税する必要があります。

 

確定申告は、自主的(自分で計算して自分で申告)に行うことが前提とされています。

 

そのため、収入があるにも関わらず、期限までに申告をしない人が多くなるといけないため、期限を守らなかった場合には、ペナルティーを定めています。

 

無申告加算税

 

確定申告の期限までに申告をしなかった人については、原則として、納付すべき税額に対して、①50万円までは15%、②50万円を超える部分は20%の無申告加算税という税金がかかります。

 

例えば、本来払うべき所得税が500万円だった場合。

 

①50万円×15%=7.5万円

②450万円×20%=90万円

 

無申告加算税は、①+②の97.5万円もかかります。

 

救済措置として、税務署の調査が入る前に自分から申告した場合などは、加算税の率が軽減される措置もあります。

 

延滞税

 

延滞税とは、本来の納付期限から実際に納付が完了した日までの期間に応じて発生する遅延利息です。

 

延滞税の率は、特例基準割合や期間などにより異なりますので、詳細は割愛しますが、だいたい年利9%ぐらいになります。

 

馬券裁判の概要

 

馬券裁判の概要は、以下の通りです。

 

・2007年~2009年間の3年間について、馬券の払戻金を確定申告しなかった。

 

・3年間での馬券の払戻金は、30億1000万円。

 

・国税庁は、当たり馬券の購入額のみが経費として認められるため、払戻金から当たり馬券の購入額のみを差し引いた28億7000万円に対して課税処分を行った。

 

・国税庁からの課税額は、5億7000万円という多額の課税処分が行われた。

 

・仮にこれまでの外れ馬券が経費として認められるのであれば、正味の利益額は、1億4000万円となる。

 

馬券の払戻金に関する税金の計算については、事務取扱指針が通達として定められており、これにより計算を行うと国税庁の課税処分は正しいこととなります。

 

ですが、実際には、払戻金の大部分を外れ馬券の購入額に充てており、払戻金の部分だけをとって課税をされると、実態に即した課税とは言えないため、その課税処分について、裁判で争われました。

 

馬券の払戻金に関する税金の計算方法は??

 

馬券の払戻金については、原則として、所得税の計算上、一時所得に該当します。

 

所得税基本通達34-1(一時所得の例示)

 

「次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。(2)競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等」

 

この場合、一時所得の計算式がどのようになっているかというと。

 

所得税法第34条2項

 

「一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。」

 

所得税法の規定では、払戻金の収入から控除できる金額は、その払戻金の発生原因に直接要した金額に限るとされています。

 

つまり、これまでいくら外れ馬券があろうと、当たり馬券の購入額しか経費として控除することが認められていません。

 

そのため、競馬の払戻金の一時所得の計算は、下記のようになります。

 

競馬の払戻金の一時所得の計算式

 

(( 払戻金 - 当たり馬券の購入額 ) - 50万円の特別控除 )× 2分の1

 

馬券裁判の争点は??

 

裁判において、納税者側は、本件の払戻金は、一時所得ではなく、雑所得に該当するという主張を行っています。

 

所得税法第35条

 

「雑所得とは、9つの所得のいずれにも該当しない所得をいう。」

「雑所得の金額は、その年中の雑所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額。」

 

雑所得の場合は、控除できる必要経費の金額について、一時所得の場合に規定されている直接要したという文言がないため、一時所得よりも必要経費の考え方が広く捉えられています。

 

つまり、一時所得の場合は、収入と直接つながりのある当たり馬券の購入額のみが控除の対象となるのに対して、雑所得であることが認められれば、外れ馬券の購入額についても必要として認められることとなるのです。

 

なぜなら、外れ馬券を含む一連の馬券の購入が、一体の経済活動の実態を有するのであれば、当たり馬券の購入代金の費用だけでなく、外れ馬券を含むすべての馬券の購入代金の費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するということができるからです。

 

馬券裁判の結果は??

 

地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所ともに納税者の主張が認められました。

 

最高裁判決の要旨としては、「馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定などに基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして、当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げるなどしていた本件事実関係の下では、払戻金は所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たる。」という判示がなされました。

 

あくまでも、今回の納税者のケースでは、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」との主張のもと、上記の判示がなされていますので、全ての馬券の払戻金について雑所得としての取扱いが認められたわけではありません。

 

馬券裁判後の課税庁の取扱いは??

 

本裁判の結果を踏まえて、国税庁の内部運用指針である所得税基本通達に改正が行われました。

 

所得税基本通達34-1(改正後の注意書き)

(注)1 馬券を自動的に購入するソフトウェアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり複数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する。

2 上記(注)1以外の場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、一時所得に該当することに留意する。

 

改正前と改正後の比較ポイント

 

改正前は、馬券の払戻金は、馬券購入行為の態様や規模に関わらず、一律に「一時所得」に該当すると規定されているだけでした。

 

ですが、改正後は、馬券購入行為の態様や規模によっては、一時所得ではなく、雑所得に該当する場合があり、その場合においては、外れ馬券も所得から控除できる旨、注意書きがなされました。

 

競馬の馬券購入については、事業所得には該当しないの??

 

裁判で争われた所得分は、「一時所得」と「雑所得」でした。

 

では、「事業所得」には該当しないのか?という疑問が残るところですが。

 

競馬などの払戻金については、現行法上は、事業性という観点から事業所得としては認められていません。

 

そもそも事業所得とは、「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう。」とされています。

 

競馬という偶然性の高さや、予測可能性の困難さ、職業としての社会的地位の客観性などの理由から、事業としては認められていないのかも知れません。

 

この件については、所得税法基本通達の改正の際のパブリックコメントに対する国税庁の回答に見られます。

 

「所得税法上、事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生じる所得とされており、競馬の馬券の払戻金は、このような事業から生じた所得と認められないことから、事業所得に該当しないと考えます。」

 

また、平成28年11月9日横浜地裁判決においては、競馬の払戻金による所得が、「事業所得」又は「一時所得」に該当するかが争われました。

 

納税者側は、事業所得であることを主張しましたが、結果として、一時所得に該当するという判断がされ、納税者敗訴となっています。

 

判決では、一時所得に該当するかどうかについては、3要件(①除外要件、②非対価性要件、③非継続性要件)を満たすかどうかで判断され、一般的な馬券の払戻金については、3要件全てを満たすことから一時所得であるとされています。

 

結果として納税者の主張が認められはしたものの。

 

馬券裁判においては、結果として納税者の主張が全面的に認められ、課税処分の大幅が減額となりました。

 

ですが、裁判費用はもとより、当初より多額の所得の無申告であったため、課税額の大きさから、ペナルティーとしてかされる無申告加算税や延滞税も大変大きな負担となっています。

 

不要な税金の支出を減らすためにも、収入があった場合は、放っておかずに税務署や税理士に相談を行って、適正な納税を行うようにしましょう。

 

納税という行為の意義や、多額の脱税案件を取り扱う通称マルサのことなどは、こちらのコラムにて。

 

『無申告やつまみ申告などの脱税行為、本当に続けますか??』

 

LINE@サポート窓口はこちら

LINE IDから
@sak8119o
友達追加ボタンから
QRコードから

お問い合わせの際には、
下記の項目をお送りください。
①お名前 ②事業内容 ③お問い合わせ内容 原則として24時間以内に、税理士の有馬から
返事をお送りして、ご相談の概略をお聞きした上で、
ご相談の方法・日時を調整いたします。

※お客様からお問い合わせいただいた内容については、個人情報保護方針を定め、情報の管理保護に努めています。

※お客様からお問い合わせいただいた内容については、個人情報保護方針を定め、情報の管理保護に努めています。